淫讐のじかん 猫肉しゃけ

『淫讐のじかん』は、復讐譚をエロ同人界隈の現実（DM、オフパコ、支援サイト）と地続きに置いた設定がまず強い。過去のいじめが悪夢のループとして差し込まれ、現在の自我を侵食する構図はスリラーの語法。鉛筆質感の線と細かいクロスハッチ、背景の生活臭（散らかったPCデスクや通知UI）が生々しい時代感を運んでくる。

コマ割りは斜線や縦長の分割で視線を加速、スマホ→回想→現在のカットバックも滑らか。SFXと吹き出しの配置で“圧”を作るのが巧く、表情芝居――とくに目元の湿度と口角の歪み――がキャラの歪んだ関係を語らせる。

難点は、女子トイレ周辺の連続カットでフキダシ密度が高すぎて呼吸が浅くなるところ。余白を一段抜く、主線をわずかに太らせて“読点”を作ると、読み味がさらに上がるはず。

総じて、復讐の“情念”を現代SNSのディテールで補強した、情景の勝ったサスペンス寄りの一作。作家の武器は陰影の設計と現実小道具の描写力だね。